タイの警察官という職業


警官になりたい者たちは理想を持ってこの職業を選らんでいる。自分の仕事にベストを尽くし義務をはたしたいと考えている。
しかし現実に直面するとすぐに彼らの理想は捨て去られ、悪徳警官と呼ばれている先輩たちと同じ警察官に変わっていってしまう。
少ない給料と今の警察行政が彼らを悪の道に誘い込んでいるのかもしれない。結果はいつも同じなのだ。タイの人々が警察官に持っているイメージ、汚職と権力の乱用に落ち着いてしまうのだ。

チラポン・オンチエン巡査の場合

チラポン・オンチエン巡査25歳はウボン・ラチャタニーの出身である。彼は地元県営病院で看護士として働いていた。しかし彼にとってこの公共福祉施設は将来に希望が持てなかった。そして彼は警察官になろうと決意しメトロポリタン・ポリス・トレーニング・スクールに入った。
彼は1年間で全ての必要なコースを終了した。そしてスクールの同僚と同じく1月に晴れて警察官の資格を得た。
警察官になるためのトレーニングは、午前5時半起床、フィジカル・トレーニングの後、午後3時まで授業、その後野外トレーニングが続く。警察の情報筋によれば、このトレーニングも資金不足のため充分な設備やスタジアムがそろっていないと言う。
トレーニングの間、月に1,140バーツ(約5000円)が給料として支払われた。トレーニング・スクールでの生活は全て無料だから普段の生活は差し支えない。しかし、地方に帰る場合、この中からバス代を出すのは大変であった。
彼は警察官になりたい夢が実現したとき、警察の持つ悪いイメージを良くしたいと強く思っていた。
彼は勤務場所を求人リストからメトロポリタン・パトロールの特別オペレーション課に希望した。大学卒業の資格を得るための勉強に必要な時間が充分取れると考えたからだ。学士を取れば警察で上に行ける可能性がある。希望に燃えていた。
しかし、まず最初にチラポン巡査がやらなければならなかったことは自分の拳銃を買うことだった。そのコストは18千バーツ。警察から支給される拳銃は品質が悪く危険なのだ。そしてまた彼は住む所をさがさなければならなかった。今の警察で用意されている施設では不十分なのである。しかし、警察から家賃の補助は全くなかった。
彼が平の巡査で働いている間は平均給料は5,100バーツである。時々これが4,000バーツになることもある。アルバイトをしなければ生活は無理だった。

ベラサック・サワヂヨティン巡査の場合

ベラサック・サワヂヨティンは22歳である。1年前彼は自分の生活を安定させるため銀行員を辞めて公務員になろうと考えた。そしてトレーニング・スクールを卒業し警察官になる資格を得た。
彼が警察官になったとき、彼の給料は前の仕事の半分にだった。
ベラサックは言う「私は公務員になりたかったんです。そしてやっと会社務めから警察官になることができました。」ベラサックは警察の悪いイメージを認めていた。そして彼も最初は警察を良くしたいと思っていた。
現実は厳しかった。彼の4千から5千バーツの給料だけではとても物価の高いバンコクでは暮らしていけなかった。
彼もまた卒業後すぐ最低でも18千バーツの拳銃を買わなければならなかった。そしてほとんどの同僚と同じく、7千から8千バーツの携帯無線機も買った。ある同僚はモータバイクも自分で買った。

警察官の現実

1年のトレーニングの後、彼らは期待していたことと現実は違うことを知らされる。「私が考えていたことと大きく違うことが判りました。私は警察を良くするよう努力しますが現状を変えることは出来ないかもしれません。」とチラポン巡査は言う。
「私たち警察官のほとんどが、定年まで警察官でいようとは思っていませんよ。今私たちはベストを尽くして働いていますが、もし機会があれば辞めるでしょう。歳をとってから転職は難しいですから。」と彼は警官の将来について全く希望を持っていない。
ベラサック巡査は警察になっても何の利益もないと言う。「警察官が良いことをしても警察官だから当たり前だと言われるでしょう。もし悪いことでもしようものなら、社会から永久に軽蔑視されますからね。」

良い警察官を育成するために

警察教育局のコミッショナーであるウェラ少将は言う「警察トレーニング・スクールに入って来る者はほとんどが地方の貧しい人たちです。警察が制服を着て悪人を逮捕したり事件を調査する仕事だからでしょうか、ほとんどが警察官になれば人々から尊敬されると思っています。」
警察庁や政府は彼らに少ない給料で、良い警察官になることを期待していると少将は言う。「私たちは良い教育を持った警察官が欲しいんです。しかし、たった月に5千バーツしか払えません。これはモータバイク・タクシーの運転手より少しましな程度なんです。」
彼はまた言う「警察の予算を増やしてほしい。そうすれば、警察官の応募者も増えるし、その中から我々が人選して、もっと質の良い警察官を作ることができるのですが。」

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