タイの高齢化社会



ブアカムが若かったころは長生きして家族と一緒に楽しい人生を過ごしたいと思っていた。しかし75歳の未亡人になって長生きすることは今では惨めなことになってしまった。

彼女は今チェンマイの小さな村で子供たちと離れて住んでいる。彼女の夫は随分昔に死んでしまった。子供たちは病気がちの年寄りの世話は今の生活では耐えられないと言っている。
急速な工業化による変化が地域社会を崩壊させ、多量の移住者を産みだした。それが年寄り切り捨てるという深刻な社会問題を増加させている。

若者たちは家族から離れたがり、核家族化が進む。それにより伝統的な大家族が減少して、それは年寄りをのけ者にしてしまう。

アメリカの世界人口調査機関のレポートによればタイ国の65歳以上が人口に占める割合は1990年に4%だったが2020年には15% (約1078万人)になると予想されている。
しかし子供が少なく、未亡人や貧困者が多い社会の老人たちに対する社会福祉の予算はほとんど無い。

アジアの人口と老人占有率(2010年は予測)人数単位=千人

国別1990年人数(占有率)2010年人数(占有率)
オースラリア17,071 (11.2%) 21,151 (13.4%)
バングラディッシュ114,023 (3.0%) 176,902 (3.4%)
中国1,133,683 (5.8%) 1,420,312 (8.3%)
インド852,667 (3.7%) 1,172,101 (5.3%)
インドネシア189,169 (3.0%) 252,864 (5.9%)
韓国43,237 (4.8%) 51,677 (9.0%)
マレーシア17,556 (3.7%) 26,589 (5.0%)
フィリッピン64,404 (3.6%) 90,316 (4.9%)
シンガポール2,720 (5.8%) 3,206 (10.4%)
タイ56,002 (4.0%) 70,740 (7.2%)
日本123,567 (11.8%) 130,480 (21.3%)

高齢化するアジア


高齢化社会の訪れはタイだけではない。出産率の低下と医療向上による死亡率低下で世界中の国々の人口統計は年齢別に見ると高齢化にシフトしている。西暦2025年にはアジアだけで65歳以上の人口が6億人に達すると予測されている。

このような莫大な数をアジアの労働者たちは支えることが出来るのだろうか。

多くの人にとって歳を取ることはもう喜ばしいことではない。アジアでは多くのお年寄りが家族と一緒に住んでいるけれども貧困者の子供たちは老人の世話を満足に出来ない。

加えて多くの者たちが老後のことを考えていない。不健康な生活が慢性的な病気を産み出し若いときの浪費は彼らの老後人生を惨めなものにしてしまう。
多くの人たちに取って歳を取ることは仕事、社会的役割そして地位を失うことである。それゆえ経済的に困ることも多くなる。

「このことは自尊心を傷つけます。しかし多くの人はこれに対処出来ません。そして老人は大きな不安を持つことになります。」マカオの社会福祉局のマリア局長は言う。

マリア氏はオーストラリアのパース市で開かれた「アジアと太平洋地区の労働者年齢について」の会議に参加した。
ヘルプ.エッジ インターナショナルと西オーストラリア政府の協賛で行われた会議にはカンボジア、マレーシア、インドネシア、スリランカ、中国、フィリッピン、マカオ、ホンコン、ベトナムそしてオーストラリアが参加した。

会議ではどのアジアの国々でも仕事をリタイヤした人は病気の不安、孤独や寂しさを感じることが報告された。かつてどこでも国でもお年寄りの言葉が尊敬を持って扱われていたのだが。
彼らの生産意欲について調べてみるとアジアのお年寄りはほとんどが活動意欲はなくなり非生産的で役に立たなくなってしまっている。

「自分は価値が無いという感情が老人から生きる意欲を失わせている。」マリア氏は付け加える。

例として効率的な工業化が行われたシンガポールを見てみよう。すると急速な経済発展と都市化は老人たちに影響を与えていることがわかる。
「伝統的な親孝行や年寄りに対する尊敬は近代シンガポールではどんどん薄れて来ています。」NGOグループのTSAO FOUNDATIONで働くスーザン女史は言う。「しかしやはりお年寄りは子供たちが世話しなければいけないと思っています。」

子供たちが結婚し共働きの場合には年取った親と一緒に住むことが出来るか否かは難しい。
「むかしは女性が親の世話をすることが普通でしたが今は女性も働いているのです。」

自分の両親や義理の親たちの世話をすることは働いている女性に取って大きなストレスとなる。彼女たちは子供も育てなければならないのだ。そのようなプレッシャーは家族崩壊にもつながると彼女は言う。

しかし貧困者たちはもっとひどい。彼らは都会で働くため両親を置き去りにしなければならない。「貧困社会では年寄りを世話できるのは彼らと同じ歳の者かより歳を取ったものだけかも知れない。」とフィリッピンの年寄り介護協会のドリス氏は言う。

他の開発途上国と同じようにフィリッピンのお年寄りの多くは掘っ立て小屋に住み収入は不安定で同じ年代のお年寄りと話すことも無い。ベトナムやインドネシアや他の貧困者をもつ国々では同じである。

内戦のつづくカンボジアのお年寄りはもっと悲惨である。戦争で家族がバラバラになり老人は貧困生活をせざる得ない。
「特に外国に避難民としていて帰ったきた老人たちは土地も家も失い、そして財産は彼らを世話する子供たちに売り払われてしまいます。」カンボジアのヘルプ.エッジのプラティン氏は言う。
生活手段のない貧困家族は老人の世話をすることは出来ない。かつて農民社会にあった福祉組織の自治援助団体は戦争でもう無い。「彼らは共同生活をする気持ちさえありません。新しい村ではお互いを信頼することが出来ない人が増えて来ています。」プラティン氏は言う。

カンボジアではお寺だけが戦争で荒廃した彼らに援助をすることが出来る組織だ。「しかし貧困は社会に対し壁を作ります。着る物も無く援助も無い人々はお寺に行くことも恥ずかしくて出来ない。村の祭りにも参加したがらないのです。」とプラティン氏は付け加えた。

高齢化の対処


我々は訪れる高齢化社会に対処するべくもっと時間をさくべきだしもっと活動すべきだ。
しかしある政府機関はかなしい現実を言ってくる。「老人問題は多くの国では優先順位が低い議題なのです。」タイの市民協会相談役のボリブーン教授は言う。
「老人福祉や社会安全システムは経済問題などに比べて小さい扱しかされません。」

この問題は伝統的な家族構成がまだ続いているという行政機関の信じ込みから来ている。政治は無駄な老人問題よりもっと若若しい経済発展などの問題に向きがちなのだ。
「人間社会はあらゆる年代の人の世話に対して責任を持つべきです。若者もいつか老人になることを忘れては行けません。」ヘルプ.エッジ.インターナショナルの代表ステェファン氏は言う。

「老齢化の問題はまだ小さい問題と考えられていますが老人の数が多くなればすぐに先入観は変わるでしょう。」

いくつかの国ではすでに老齢福祉や引退した人たちを援助する計画を実施している。

シンガポールでは定年退職した人の援助する福祉基金計画を立ちあげた。そして1995年シンガポールは激論のすえ60歳以上のお年寄りに対し子供たちが親を世話することを義務ずける条例を作った。
「難しい問題です。親たちが自分の世話をしてくれない子供たちを訴えることは心痛を伴いますから。」この法律では老人たちが若いとき彼らの両親を世話していないことが証明されればその子供たちに世話を要求出来ない。

老後を送るための貯金やどのように健康な生活をおくるかの教育、老人が社会の中で活動できる環境を整えること、そして適当なヘルス.ケアが大事だと専門家たちは言っている。

日本では老人介護を病院から社会が行うようにシフトしようとしている。

フィリッピンでは老人問題が大統領選挙選での重要な1つの政策課題になっている。候補者の何人かは老人を虐待したものを処罰する法律をつくることを掲げている者もいる。

まだ社会システムが弱い国の中には慈善団体が老人のための健康診断や援助に重要な役割をしている。「カンボジアの老人の多くは白内障で目の見えない人が多い。彼らの多くが輸送機関に乗ることも出来ず病院にも行けないのです。」
ヘルプ.エッジ.カンボジアは白内障のお年寄りを減らすため手術ユニットを提供し始めた。

老人の社会復帰


老人になると病気がちになり働けなくなると考えられているが彼らの持っている経験やエネルギーはまだ使えるのである。
多くの老人はまだ十分に働くことができる。しかし退職した後は彼らの専門知識や経験が役に立たないものと思われてしまう。

地域社会の奉仕に彼らの力を使うことは彼らの人生を良くするよい方法である。これはフィリッピンで行われている老人たちが行っている連携サービスプログラムの話である。

そのプログラムは地域社会の老人たちをヘルス.ワーカとしてトレーニングする。そこで彼らは歳をとることで起こる精神的変化や病気との関係を教えられる。トレーニング終了後、彼らはヘルス.エデュケータとして人生に対する生きがいをみいだす。そして健康になり自信をもった顔つきに変わって行くのだ。

フィジーでは老人を積極的に地域開発に参加させている。手工芸の技術のある人は伝統的知識として若者にそれを伝え、高学歴のものは若者の教師として働く。

老人にボランティアで働いてもらうようにすることは容易なことではない。なかには公の場で自分の気持ちを表現するのがうまくない人もいるし、ある人は家庭の仕事が忙しくて両立できない人もいる。

ここで成功したオーストラリアのアボリジンの話がある。オーストラリアは1788年の植民地以来、土着の人たちの文化の大量破壊に苦しんでいた。
政府はアボリジンの若者の間の犯罪、麻薬そしてアルコールの問題を解決出来なかった。そして最後に老人に協力を求めた。

「結果として若者と老人たちの関係も良くなり家族関係もうまくいくようになったよ。」西オーストラリアで働くアボリジンの1人であるノーマン.ハリスは言う。

「もし老人の持っている価値に気づけば、昔から老人は若者の模範であり指導者であり文化を教える教師であり社会のアドバイザーであったことがわかるだろう。」とノーマン氏は付け加えた。


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